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司馬江漢=鈴木春重

2009-09-23

日本で最初に銅版画を制作した司馬江漢は、初期の頃は浮世絵師「鈴木春重」として活躍しています。

錦絵を誕生させた鈴木春信の可憐で繊細優美な美人画が大流行した明和期は、他の絵師たちも春信風美人画を描くことに終始しました。 司馬江漢もその一人だった訳ですが、最初春信落款を用いて作品を制作し、後には鈴木春重の雅号で春信風美人画を描いています。春信と見間違えるほどの美人を描いていますが、背景に極端な遠近法を用いているため、「楼上縁先美人」などは春信落款ではあるが江漢作と目されています。

江漢は後に、『春波楼筆記』の「江漢後悔記」の中で、春信没後にはその偽作を制作したが誰も気付くものはいなかった、と自ら告白しています。

江漢は世間の人々を驚かせるのが好きなお茶目で憎めない人物だったようです。

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鈴木春重(司馬江漢)「楼上縁先美人」(春信落款)

東京国立博物館蔵

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鈴木春重(司馬江漢)「碁」(春信落款)

ギリシャ国立コルフ・アジア美術館蔵