漱石の本
5月の連休中に小学生の孫たち用にと、私の好きな夏目漱石の「坊ちゃん」と「吾輩は猫である」の小学高学年・中学生から向きの文庫本を買いました。どちらもパラパラとめくりながら、いつの間にか自分が本気になって読み始めています。
これらの文庫本は原文を現代かなづかいに改め、漢字にはふりがなが振ってあり、読点や改行、注釈なども付してあり、とても読みやすく編集してあります。
中学生の頃だったか夏目漱石を学校の図書館で初めて読んで、「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。・・・」や、「吾輩は猫である。名前はまだ無い。・・・」と、歯切れがよくてリズム感のある書き出しに震えるほどの興奮を覚えながら読んだ記憶が蘇ります。
漱石の本を初めて自分で買ったのは成人した後の日本現代文学全集(1961年講談社発行)でしたが、これは千々石町からこの地に引っ越した時に処分してしまいました。しかし、「吾輩は猫である」は「復刻 初版本 夏目漱石文学選集」(日本リーダーズ ダイジェスト社 1979年発行 全12冊) が手元にあり、これらは書棚の一番座りのいい所に並べています。
この本(上編、中編、下編の3冊)は天には金色が塗ってあり、本文は4枚(8ページ)毎に地(下部)を袋閉じてあり、読む際はその部分をペーパーナイフで切って読むようになっていますが、今日までそのままの状態で保管しています。しかも、本の装幀は漱石にして「僕の文もうまいが橋口君の画の方がうまいようだ」と言わしめた私共が大好きな新版画・美人画で有名な橋口五葉が担当しており、復刻本ながら時たま虫干しを兼ねて取り出しては表紙や背表紙、裏表紙などを丹念に眺め初版本の匂い(?) を感じ取り、私にとって大切な一冊となっています。
孫たちに「坊ちゃん」や「吾輩は猫である」が渡るのはしばらく先になりそうですが、彼らがこれらを読んでどのような感想を持つか、楽しみにしています。