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「演歌の女王」の訃報

2024-01-17

「八代演歌」と言われて日本中の演歌ファンに親しまれた八代亜紀が、昨年末に病気のため73歳で亡くなっていたことは、一ファンとして相当ショックでした。

私は現役時代、片道45分ほどの車通勤の往復でほとんど毎日、好きな演歌歌手のカセットテープやCDをかけて聴いていました。

特に、彼女が歌う「なみだ恋」や「愛ひとすじ」「もう一度逢いたい」「おんな港町」「恋歌」「愛の終着駅」「舟唄」「雨の慕情」などが入ったカセットテープは、擦り切れるくらい繰り返しくりかえし聴きながら運転していました。

そして現役を退いて数年前、長崎県美術館で開催された「八代亜紀 アートの世界」展を鑑賞して、彼女の絵画の能力には驚嘆、圧倒されました。

連続ヒットを飛ばして国民的演歌歌手として超一流となり、歌は勿論、映画や舞台など各方面で活躍し超多忙だったであろう彼女が、幼少期から絵が趣味とはいえ、何時こんな繊細で独特な写実的絵画を描く時間があるのだろうかと不思議でなりませんでした。

彼女がデビューして40周年を迎えた2010年、西日本新聞社から、聞き書き「八代亜紀物語-時流れて、今」が出版されています。2010年4月から6月にかけての新聞連載当時は、毎回この欄を真っ先に読んで、コピーを取って保存していました。

連載執筆者のあとがきには、‟八代さんは「80歳になった時に、ナマの『舟唄』を若者たちに聴かせるのが夢なの」と言う。”と、彼女が希望を語ったことも記してあります。

残念ながら、80歳の彼女が歌う「舟唄」を聴くことは叶わなくなりましたが、誰からも愛された八代亜紀 =「演歌の女王」のご冥福をお祈りいたします。

 

「八代亜紀物語 時流れて、今」(浜口雅也著 西日本新聞社発行)