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小村雪岱について

2010-02-10

最近、全国的に美術館の企画展や雑誌等で特集を組まれ注目を集めているのが「小村雪岱」(1887~1940年)です。

私は、小村雪岱についてはあまり知らないで、錦絵創始期の美人画を彷彿させる作風の画家だという漠然としたイメージしか持っていませんでした。

彼は本の装丁家としてデビューした後、挿絵や日本画、舞台美術家として大正から昭和初期にかけて活躍しています。画業の初期には、泉鏡花の本の装丁や挿絵、資生堂の香水瓶のデザインなどを手がけ、これらの作品はアールヌーボー的な要素に日本の花々などをモチーフに仕上げていてモダンなデザインを作り上げています。また、邦枝完二の小説「おせん」の挿絵からは、錦絵の創始者「鈴木春信」のモチーフに登場する市井の評判娘「お仙」と重なるような浮世絵的な美人の印象が見られます。それから、東京大震災後の歌舞伎の舞台美術を創作し、日本画を学んだ雪岱のスケールの大きな舞台美術は絶品との評判で、現在までも受け継がれ上演されているそうです。極端に遠近法を用いた風景画や、か細く可憐な美人画などの肉筆画も一見の価値があります。

埼玉県立近代美術館で「小村雪岱とその時代 粋でモダンで繊細で」(~2月14日まで)、川越市立美術館で「小特集・小村雪岱」(~3月28日まで)が開催中です。

1265779241_img215邦枝完二「絵入草紙 おせん」表紙 新小説社 (昭和9年)

1265779241_img219「見立寒山拾得」 埼玉県立近代美術館蔵

1265779241_img220六代目尾上菊五郎依頼 「藤娘」 舞台装置原画 (昭和12年)