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大吟醸酒の「長崎美人」

2010-12-16

長崎県平戸市にある福田酒造の大吟醸酒「長崎美人」は、まろやかな味と気品にあふれた香りでとても美味しい日本酒です。このお酒のラベルに使用されている浮世絵美人画は、鳥文斎栄之の「青楼芸者撰 いつとみ」という作品です。

鳥文斎栄之(1756~1829年)は狩野派で学んだ後、北尾派や鳥居清長風の美人を描き、歌麿の大首絵に対抗して全身像の姿態美を追求した美人画で歌麿に迫る勢いの人気絵師として活躍し、栄之派の一派を形成しています。

栄之は主に肉筆画を多く描いていますが、版画にも優れた作品を残し「青楼芸者撰」は代表作品の一つです。これは吉原の女芸者を描いた揃い物で、「いつとみ」の他「いつ花」、「おはね・おふく」を描いた大判錦絵三枚続です。しかし、現存する作品は退色が激しく美しさは薄れているが白雲母摺の豪華な作品であったと分かっています。「いつとみ」はすらりと伸びた立ち姿が芸者の心粋を見事に表現していて艶麗さと清楚さとを合わせ持っているバランスのいい作品と評価されています。

江戸時代の寛政期に活躍した鳥文斎栄之の美人画が、「長崎美人」として現代の世に活躍しているのは喜ばしいことです。

1292467903_NONALNUM-B1C9C7B7鳥文斎栄之「青楼芸者撰 いつとみ」

東京国立博物館蔵 寛政年間(1789~1801)

1292467903_CIMG1143-1福田酒造 「長崎美人」