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「音はしくれか」

2011-03-22

種田山頭火(明治15年~昭和15年)が詠んだ句で一番短い句は、わずか7音の「音はしくれか」です。

美術館には小﨑侃先生制作の版画「音はしくれか」を展示しています。当館の中では一、二を争う人気作品ですが、鑑賞された方々から「どのような意味ですか?」と度々聞かれます。自由律俳句の中の短律句なので、ちんぷんかんぷんだと思われますが、その背景にはやはり意味があります。

これは山頭火が昭和7年10月に山口県小郡の其中庵で詠んだ句で、草の根をしたたるしぐれの音から「音はしくれか」が突発したのだそうです。「時雨(しぐれ)」とは、晩秋から初冬にかけての時々雨が降ったりいまにも降りそうであったりする空模様のことを言うそうですが、現実には聞こえることのない草の根を滴る雨の音を感じ、それをストレートに表現したのだと思います。

山頭火の繊細さを感じる一句です。

1300757594_CIMG0405-1-1小﨑侃制作 「音はしくれか」