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邦久庵の池田先生を訪問

2011-08-29

先週土曜日、西海市琵琶の首鼻にある池田武邦先生の住居「邦久庵」を訪ねました。いつも溌剌とされて若々しい池田先生は今年87歳になられます。が、最近体調が優れないこともあり来月初めには東京での生活にお戻りになるとお聞きし、先生がお帰りになる前にどうしても一度お会いしたいと今回の訪問となりました。

2年振りにお会いした先生ご夫妻は、いつもと変わらない優しい笑顔で出迎えてくださいました。 船のデッキをイメージして設計された海面に浮遊しているように感じる邦久庵のテラスに座り、穏やかな海と向かいの島や山々を眺めながら歓談しました。その後、先生に案内していただき庵の周りを見学しました。庵のテラス下は100年以上も前に積み上げられた石壁で、反対裏側の方には傾緩斜消波石積みの防波堤があります。この傾緩斜消波石積みの防波堤は池田先生のご発案で、生態系を壊すことなく海と陸を繋いでいて、その境界付近には海と山のいろいろな微生物が生息しており、また防波堤は台風などの時大きな波が来ても波を吸収して消すような構造になっていて、長崎オランダ村とハウステンボスの海岸線石積みの原型と教えてくださいました。

池田先生は仕事の関係で長崎と深い関わりを持つようになり、昭和45年頃から東京と長崎を行き来される生活をされていましたが2001年、永住を視野に入れてこの地に「邦久庵」を建てられました。この家を設計する時に一番考えたことは肌で自然を感じるようにと話された通り、庵自体が大自然と一体となり包み込まれているような態様です。材料はほとんどをこの土地のものを使い、日本古来の伝統技術を取り入れた茅葺き屋根の家を造られました。この土地のもので暮らし、最後にはこの土地に還っていくことが地産地消で、昔の人々は皆そのように暮らしていたと言われます。

雑音のない静かな空間に、時折、波の音と海鳥の鳴き声が響く自然そのままの場所で先生と一緒に過ごした2時間はあっという間でした。名残り惜しさを感じながら、東京での再会を約束して先生ご夫妻とお別れしました。引越し準備等でお忙しい中に貴重な時間を割いていだたき、感謝の気持ちでいっぱいです。

1314590405_CIMG3675-1邦久庵テラスからの眺め

1314590405_CIMG3681-1傾緩斜消波石積みの防波堤で、池田先生

1314590405_CIMG3679-1テラス下の100年以上も前に積み上げられた石壁