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広重「猿わか町よるの景」

2012-10-31

この幾晩かは、秋の夜空に月が煌々と輝いています。10月も今日までとなりました。

浮世絵風景画で有名な広重は、「月」を題材にしたたくさんの名作を描いています。晩年の代表作である名所江戸百景シリーズでは「猿わか町よるの景」「永代橋佃しま」「よし原日本堤」「虎の門外あふい坂」「京橋竹がし」や「月の岬」など。 また、木曽海道六十九次之内では「洗馬」「望月」「宮ノ越」「長久保」など。 東都名所シリーズでは「高輪月の景」「吉原仲之町夜桜」「道灌山虫聞之図」など。それに、江戸近郊八景之内の「玉川秋月」や、切手にもなった短冊形の名作「月に雁」等々・・・。極めつけは、神奈川県の名所・金沢八景の雄大な景色の秋の月夜を描いた三枚続きの大作「武陽金沢八勝夜景」です。

私は、どの作品も好きで甲乙付けがたいですが、強いて言えば「猿わか町よるの景」を挙げたいと思います。白い柔らかな満月が下界を照らし、芝居小屋の前を行き来する人物や犬などの影までを路上に照らしている光と影の表現に、気候の良い秋の夜の幻想さを感じさせられます。

1351661563_img004広重 名所江戸百景「猿わか町よるの景」