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岩田専太郎の「鳴門秘帖」挿絵

2013-09-18

岩田専太郎は、吉川英治原作「鳴門秘帖」(大阪毎日新聞、1926(大正15)年8月)に挿絵を描いたことで、一流挿絵画家の地位を得たといわれています。

私は、その鳴門秘帖の映画を小学校6年生か中学生の頃に観たことがあります。確か、長谷川一夫主演で、主人公の虚無僧姿での登場が印象に残っています。

先日、専太郎の挿絵が入った「鳴門秘帖」の本を入手しました。この本は、新聞連載中の全挿絵を加えて、昭和37年8月に中央公論社から発行された上下2巻ものです。岩田は、この本の挿絵あとがきで、「二十歳そこそこの頃に描いた、このさし絵を今みると、恥ずかしさで胸が一杯です。吉川さんの作品の邪魔になるかと心配でもあります。今また、これを、皆さんにご覧に入れるのは、はっきりいえば、厭なのですが、この恥ずかしさに耐えることも、仕事のうちと諦めました。」と述べています。

専太郎は、新聞小説では他に、三上於莬吉の「日輪」(大正15年1月毎日新聞)、大佛次郎の「赤穂浪士」(昭和2年東京日日新聞)、江戸川乱歩「吸血鬼」(昭和5年報知新聞)、川口松太郎の「蛇姫様」(昭和14年東京日日新聞)、尾崎士郎の「高杉晋作」(昭和16年朝日新聞)、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」(昭和37年産経新聞)、平岩弓枝の「女の顔」(昭和44年日本経済新聞)等、たくさんの著名な作家の挿絵を描いています。

「鳴門秘帖」上下2巻は、開催中の木版美人画と一緒に展示しています。いよいよ、「岩田専太郎木版美人画展」も押し迫ってきました。どうか、こちらもご覧になってください。

1379470144_CIMG4983「鳴門秘帖 上巻」(吉川英治著 中央公論社発行)

1379470144_img002「鳴門秘帖」岩田専太郎の挿絵の一こま