美人画について~(8)-5~
2008-09-29
8-5、美人画を際立たせるテクニック 色彩表現
喜多川歌麿の作品『鮑取り』は、当時誰もが描かなかった全裸婦を描き、その際初めての試みとして女性の輪郭線を墨色ではなく肌色を用いて表現しています。
また、『錦織歌麿形新模様』のシリーズ3図は、いずれも出来るだけ墨の線を少なくし、色版により着物の模様や質感を表現するように工夫して豪華な作品に仕上げています。題字を表した巻物形のコマ絵には、それぞれ美人画家としての歌麿の自負が表明されています。『白うちかけ』では、理想的な美人画を描くことの出来る自分の画料が高いのは当然のことと誇り、歌麿の自信の程がうかがえます。
繊細で優雅、大胆で華麗と様々な美人画について見てきました。一流と言われる絵師たちは、限りなく切磋琢磨をして、オリジナリティのある時代の好みを反映した美人画を創り出し、私たちを楽しませてくれています。
喜多川歌麿『鮑取り』 ギメ東洋美術館蔵
喜多川歌麿『錦織歌麿形新模様 浴衣』 シカゴ美術館蔵
喜多川歌麿『錦織歌麿形新模様 白うちかけ』
ベルリン東洋美術館蔵