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歌麿の夏らしい美人

2014-08-03

先日少し茶道の稽古をしましたが、茶道の世界では季節に合わせてお道具を変え、夏には葉蓋に水滴を垂らし、ガラスの茶器などを使って涼しさを演出します。

浮世絵でも季節感が大切に描かれていて、団扇で風を送るくらいしかない江戸時代に、見る人に涼味を与える絵は一つの涼の取り方だったと思います。

喜多川歌麿が描いた美人画のうち「納涼美人図」は、夏物の着物を着て座る女性は帯を前結びにしており位の高い遊女だと思われますが、ごま摺という技法を用いてあり、黒い着物から透けて見える上半身の赤い長襦袢と下半身の足の白さが美しく艶麗な色気を漂わせています。また右端に置かれた石菖の水盤にはたっぷりと水が張ってあり夏の盛りの時候を表していて、帯と草の緑色が一層爽やかさを演出しています。

歌麿を代表する「婦人泊り客之図」は、3枚続きの大画面を利用して蚊帳の中と外に女性を配し、寝支度をする女性が描かれています。蚊帳の中の女性を透かして見せ、団扇を手に持たせ、季節感や時間を表す工夫を見せています。

歌麿の美人画は単に女性を描くのではなく、小道具や摺りの技法に工夫を見せて季節を表し、粋な江戸っ子たちを楽しませたことでしょう。(N)

 

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 喜多川歌麿「納涼美人図」千葉市美術館蔵  喜多川歌麿「婦人泊り客之図」大英博物館蔵