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叔父との別れ

2014-08-09

先月末、長年入院闘病生活を送っていた叔父が逝きました。享年81歳。

生涯独身だった叔父は歩くことが困難になることから始まる難病を患い、約13年間に亘る病院暮らしを余儀なくされました。入院当初の約5年間は、枕元にラジカセを置いて何時も好きな演歌を聴いていて、中でも、北島三郎の大ファンで、時にはテープに合わせて隣りの人に迷惑がかからないように小さな声で口ずさんだり、メロディーを口笛で吹いたりしていました。テレビでは高校野球、プロ野球、相撲やプロレスなどの中継を楽しんでよく観ていました。入院先は完全看護の病院でしたが、一週間に一度の顔の髭剃りと耳掃除、一月に一回の手足の爪切りは私の役目でした。

そんな叔父が、8年前の暑いお盆前の今頃、排尿等で看護師さんたちに迷惑をかけたくないことから自分なりに考えて水分を控えていたところ脳梗塞を起こし一時危うい状態となり、担当医からは親戚関係者を集めて下さいとの指示がありました。が、奇跡的に回復を遂げましたが右半身が不自由になり、また言葉を話せなくなりました。その後は、北島三郎を聴くことも、テレビの野球中継も観ることがなくなりました。こちらからの話しかけには、時には「アーッ」とか「オーッ」とか声を出して、愉快なことには笑顔を浮かべ、悲しいことには涙ぐみながら答え、また慣れない左手にスプーンを持ち、一生懸命自分で食事はとっていました。今回も、関係者一同奇跡を願っていたのですが、とうとう黄泉の国へ旅立っていきました。

自宅前の小庭では、叔父が元気な頃、石工の仕事で何年にも亘り行き来した御蔵島からお土産に持ち帰ってきた百合の白い花が開花しようとしています。今は、叔父の安らかな眠りを祈るだけです。