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歌麿の「画本虫撰」

2014-08-11

喜多川歌麿というと浮世絵を代表する美人絵師で、女性の内面を表現した大首絵をイメージしますが、「画本虫撰」(えほんむしえらみ)、「潮干のつと」(しおひ)、「百千鳥狂歌合」(ももちどりきょうかあわせ)など花鳥画でも素晴らしい作品を残しています。

「画本虫撰」は上巻8図、下巻7図の計15図からなる木版絵本で、一画面に歌麿の草花と2種の虫の図、当時の狂歌師30人の虫を詠題とした狂歌が合わせられています。

ムカデや毛虫、トカゲや蜘蛛などの虫たちの特徴を捉えた生き生きとしたポーズ、虫に合わせて描かれた筍やトウモロコシ、芥子に露草などの組み合わせもユニークです。

繊細で柔らかく透明感のある色料を用いた薄みの美、それに雲母や小紛による華やかさの演出、きめだし・空摺・ぼかしなどの卓越した摺りが融合した「世界で最も美しい絵本」とまで言われています。(N)

*虫撰とは、虫合(歌合のひとつで、左右に分かれてそれぞれの出した虫に因む歌を詠み、その優劣を競う遊び)のために野外に出て虫を選び取ること。

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 「画本虫撰」 蝶 蜻蛉  (千葉市美術館)

*蝶と蜻蛉の羽は雲母摺で輝いている

 「画本虫撰」 虻 芋虫  (千葉市美術館)

*芋虫はきめだしで胴体を浮き上げらせている