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広重の雪景色「深川木場」

2014-12-09

広重の「名所江戸百景」は、広重最晩年の安政3(1856)年~5(1858)年にかけて描いた全部で119図からなる揃い物です。その内、冬の景色を描いた作品は20作品ありますが、現在、その中の一つ「深川木場」を常設展示で紹介しています。

江戸の家屋は木造で屋根も板で葺いてあり、また密集して家が建ち並んでいたので大火事が頻繁に起こっていました。材木置場が火事の温床となることも多かったので、幕府は何度も材木置場を移転させましたが、最終場に選ばれたのが深川の南の海岸近くで、材木置場を意味する木場がこの地の呼び名になりました。木場の四方には土手が築かれ、掘割には橋が架けられ、堀割に囲まれた造成地には材木問屋の贅沢な邸宅や風流な庭園が構えられて木場一帯は水郷的景観に富む場所となりました。

この作品は、雪の降りしきる中の木場の情景を描いた作品で、木々に降り積る雪と池の様子からしんしんと冷え込む寒さが伝わってくるようです。手前の番傘に描かれた「魚」の文字は、版元「魚栄」に敬意を表したものです。雪景色の名手として名高い広重の浮世絵をどうぞご覧ください。(N)

 

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