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橋口五葉について~(3)~

2008-10-07

前回、ブックデザイナー、グラフィック・デザイナーとしての五葉の活動に触れましたが、この他に日本画、西洋画、水彩画等でも幅広く活動しています。

幼少時に狩野派の絵師から日本画を学んだ五葉の現存する数少ない日本画作品を観ると、狩野派の影響は薄く当時の流行であった写実的な作風で水墨画や小襖絵などを描いています。

また、東京美術学校在学中に制作した貴重な油絵が数点残っていますが、その中の『光る雲』は淡い光や抑えられた色彩で印象派を連想させるスタイルの風景油彩画です。女性を描いた『女の顔』は、デッサン力に優れた量感ある作品になっています。そして展覧会で受賞した油絵『孔雀と印度女』や『羽衣』などの作品は、アカデミックで写実的に描かれていて、装飾的な芸術美に溢れています。

水彩画からは、後の新版画で制作する風景画や美人画の構想を窺うことができます。

これらの作品から五葉の多才さを見て取ることができますが、大正に入ると浮世絵の研究に励み、版画家として新版画の制作に傾倒していきます。

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『光る雲』 油彩 個人蔵

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『女の顔』 油彩 鹿児島市立美術館

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『裸婦〈温泉〉』 水彩 鹿児島県歴史資料センター黎明館

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『渓流〈耶馬渓〉』水彩 鹿児島県歴史資料センター黎明館