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橋口五葉について~(9)~

2008-10-23

五葉は、江戸浮世絵の伝統美を継承しながら新しい感覚の独自性ある美人画を創出することに成功したわけですが、五葉にとっての「新しい感覚」とは、浮世絵美人に自然な人体バランスを付与することと、浮世絵の類型的美人画から脱して女性の内面や感情までも表現しようとするものでした。

日本女性を「木版画」として表現するためには、細かいデリケートな線が不可欠であり、それには毛筆の下絵の描線にしたがって彫り出される線が有利であること、和紙こそ女性の肌を表すのに適切であることを実感していました。しかも、その制作の根本には西洋絵画の基本であるモデルをおいてのデッサンの必要性を認識していました。

そのため、実際にモデルを使っての夥しい数の裸婦あるいは着衣の婦人の素描に励み、同じような構図を何遍も繰り返し描くことで、描く対象を確実に把握しました。

五葉の素描画は、細かい部分までも省略しない几帳面な性格を示し、緻密な描写と構成、隅々にまでメリハリをつけているところが特徴です。そうして残した素描画は約3000枚と言われており、大半が木版画の下絵として描かれたもので大正7~8年ころの制作と推定されています。

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『化粧の女』

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『化粧の女』 素描画