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「日本の美・発見X躍動と回帰―桃山の美術」展

2015-09-06

出光美術館の「日本の美・発見X躍動と回帰―桃山の美術」展は、16世紀末から17世紀初頭にかけての桃山文化にスポットを当てた展覧会で、出光美術館コレクションから110点が紹介されていました。

絵画では、狩野派の鮮やかな色彩の花鳥画や屏風絵、長谷川等伯の墨の濃淡で荒々しく描いた水墨画、そして同時期の絵師による風俗画など、大和絵の要素を持ちつつ変容させた桃山の美術が良く分かる日本画の数々でした。中でも、等伯の「松に鴉・柳に白鷺図屏風」は、身近な生き物であるカラスを題材として選んでいます。それまで黒い鳥を描く時、日本には生息しない叭々鳥(ハハチョウ)が描かれることがほとんどでしたが、等伯は仏教では屍肉を食らう不吉なイメージを持つカラスの一家の仲睦まじい様子を情感たっぷりに描き出しています。

焼き物では、志野、織部、古唐津などの豊かな造形美の作品が展示してありました。それまで負の要素だった歪みや割れ、染みが美しさへと変わり、肯定的な美意識を大きく塗り替えたことが分かります。また、人々の暮らしの身近にある草花や樹木、水の流れを描く焼き物が生み出されています。

桃山文化は過去への回帰でもありながら、人々の生活の身近なものを題材として選び、風俗的な美術へと変容したことが良く分かる展覧会でした。(N)

 

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 伝 狩野長信「桜・桃・海棠図屏風」(部分)  長谷川等伯「松に鴉・柳に白鷺図屏風」(部分)
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 伊賀耳付水指  織部木瓜形蓋物